健康を支える三大要素の一つである「睡眠」は、しっかり眠ることで病気の治癒が進むなど、重要な役割を担っています。そのため、多くの医師が医療現場で睡眠の重要性を実感しています。
睡眠の問題には「不眠」「日中の眠気」「リズム障害」の3つの症状があり、その中でも「リズム障害」は夜型生活や昼夜逆転に陥っている患者が多く見られます。
現代人には夜型の傾向が見られますが、夜型生活や昼夜逆転生活に陥ると、抜け出せなくなることもあります。そのような患者の中には、睡眠薬や徹夜といった方法でリセットしようと試みる方もいますが、逆に生活リズムがさらに不規則になり、深刻な睡眠障害を抱えるようになるケースがしばしば見られます。
睡眠リズムが崩れる主な原因には、体内時計と光環境が関係しています。私たちの体内時計の周期(1日分の時間)は約25時間ほどです。しかし、毎日この少しのズレを調整しないと、睡眠リズムが自然に遅れてしまいます。一見小さなズレでも、1週間放置すると1時間以上後ろにずれてしまうため、特に夜型傾向が強い人や若い頃から夜更かしをしている人は、短期間で昼夜逆転しやすくなります。
通常、毎朝学校や会社に通うことで決まった時間に起き、午前中の光を浴びると体内時計の調整が行われ、生体リズムの遅れを修正できます。しかし、例えば不登校や休職などで社会的な時間的義務がなくなり、定時に起床する習慣が失われると、睡眠リズムが急速に遅れていきます。
また、睡眠障害のある患者の多くは睡眠不足や質の低下により、朝なかなか目が覚めず、目覚ましで一度起きても再び眠ってしまうことが多くなります。その結果、午前中の光を浴びる機会が失われ、体内時計が調整されなくなります。こうした悪循環から抜け出すためには、患者自身の強い治療意欲(治療動機)が大切で、家族のサポートも必要です。
いったん遅れた睡眠リズムを整えるのは簡単ではなく、困難な理由としては以下が挙げられます。
- 朝の適切な時間帯に光を浴びることが難しい
- 夜型生活では夜間のブルーライトによってリズムが後退しやすい
- メラトニンの位相前進効果が強力でない
- 光とメラトニンを最も効果的に利用するタイミングが難しい
- 治療初期には睡眠不足になりやすく、週末などに「寝だめ」することでリズム調整に失敗することがある
体内時計のリズムを朝方に整えるには、「光」と「メラトニン」が重要な役割を果たしますが、効率的に治療を行うためには「位相反応特性」を理解することが欠かせません。例えば、朝の光で体内時計をリセットする方法もありますが、それだけでうまくいくわけではありません。メラトニンの使用についても、適切なタイミングで服用しなければ効果は期待できません。
海外ではメラトニンが不眠改善に役立つ健康食品として市販されており、日本でも個人輸入を通じて入手する人が増えています。しかし、睡眠リズムを整える目的でメラトニンを寝る前に服用しても効果は薄いため、正しい使い方が重要です。
聖十字クリニックでは、睡眠障害のご相談も受け付けています。眠れなくて辛いという方は一度相談してもらうといいかと思います。
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